9月6日.tue @まつもと市民芸術館 19:00-21:20

プログラム
第一部 川井郁子(vn)/塩入俊哉(pf)
エル・チョクロ/アンヘル・ビジョルド
ポル・ウナ・カベーサ/カルロス・ガンデル
ひまわり/ヘンリー・マンシー二
魅惑のワルツ/フェルモ・ダンテ・マルシッチ
水百景/川井郁子
風が運ぶララバイ/川井郁子
愛のあいさつ/エドワード・エルガ―
チャルダッシュ/ヴィットーリオ・モンティ

第二部:川井郁子(vn)/塩入俊哉(pf)/楠城華子(司会・無料塾)
     久郷ボンナレット(お話とクメール古典舞踊)/久郷真輝(クメール古典舞踊)
主催者ご挨拶
ロバム・チュンボー/クメール古典舞踊 祝福の舞 :久郷ボンナレット&久郷真輝
久郷ボンナレット:お話
アメイジング・グレイス/讃美歌:川井郁子&塩入俊哉
浜辺の歌/成田為三:川井郁子&塩入俊哉
ふるさと /全員合唱(ピアノ伴奏は交代になりました。

ピアノ&マイクが置かれたスタンドが二つあるのみ。超シンプルステージ。譜面台はなし。
川井さんは曲順も総て頭にインプットなされていたのですね(スゴイ)
この芸術館のステージは見えていない横と奥に四面分の広さがあります。
ステージの奥にも気を感じる、私達もとても真剣にセンサーを張り巡らしているかという気をホール全体に感じる、癒す音色ではあるけれども耳と心を澄ます生演奏です。
オープニングはアルゼンチンタンゴの名曲、エル チョクロ(kiss of fire)
ヴァイオリンソロがなまめかしいわぁ。アルゼンチンなのですが終盤ではどことなくクラシカルな味がある色彩豊かな曲と思います。哀愁の響きとタンゴのリズムの明晰さ、スパッと切れる鋭い音にどきっ。川井さんのヒールで床を鳴らすコン!もカスタネット的効果音になっちゃう。今日のピアノの音色は柔らかいと思いました。スタインウエィがベーゼンドルファな響きを持っている感じ。
ポル・ウナ・カベーサ頭一つ分で恋敵に敗れてしまった嘆きの部分とユーモラスというか即興性もあるような楽しげなヴァイオリン&ふわりと柔らかくすくいあげるニュアンスのピアノとの掛け合いが好きです。
ひまわり
この曲はピアノソロから。陰翳に富み、
シンプルな音型が気品高く綴っていく。ヴァイオリンの低音のダークさから高音へぐっと上がりやるせなく
切ない響き。表現には甘美というより、劇的な心の内面をくっきり浮かび上がらせる意思の強さを感じる迫真の演奏。伴奏するピアノのそっと添えられる和音はどこまでも柔らかく暖かく心癒されるほどに魅力的。ドラマティックな盛り上がりはがつんと響いて。音楽表現の深い品位が備わっています。
哀愁から優雅なワルツへ。魅惑のワルツ
ステージに次々と美しい華が開花するように流麗なヴァイオリンの調べが美です。はい。全部が(^^ゞ川井さんの胸元に大きなリボンが施された可愛いドレスはシルバー色。華麗な賑やかさと抒情性が立ち代り揺らめくピアノがドレスの色をも多彩色に輝かせている。ワルツの調べの音に行間があるようで揺らぎが豊か。ぺダリングと、和音に付随する細やなトリルがなせる技ですね(*^^*)
水百景
各地の水の風景をイメージなされた川井さんの曲。小さな流れが大河へと開けていくイメージ。そこには
自然界に棲む小動物もいるよね。魚がピシャッ跳ねているよ。お互いのメロディでわき水が湧いていくような生命力を聴きます。水は生命の源。どことなくジャパネスクな音色を想います。
風が運ぶララバイ♪子守歌のメロディに、子供たちのお母さんに話しかける声がきこえてくる。お話したいのよね。丁寧に語りかける調べ。しんみりと弾きおわる、ふくよかな余韻の艶やかさがじんときました。
愛の挨拶
昨年の12月確か蓼科で聴いたときの愛の挨拶♪は、ヴァイオリンのメロディがね可愛らしかったの。タン タン タァ〜〜ンの部分が細切れなのがきゅん。この感じが新鮮で耳に残っていてまた聴かれるかなぁと秘かに期待していました愛の挨拶♪。きゅんは無かったけれども、美しい響きの潤いを保ちながら、耽美的な表情にゾクッとなる川井さんの表現の豊かさをまた想うのでした。
その細切れきゅん!はチャルダッシュにちょこっとあって、硬質できりっ!ときました。でもなんといってもたまげました部分は…
第一部ラストはチャルダッシュ
超絶技巧曲ですね。ゆったりからお馴染みのメロディが切れ味鋭く跳ねていき、緩の部分では川井さんの艶やかな音色にうっとり。んで、さて第四コーナーを回ったラストスパート直線を前にです。ここで(いつもなら)川井さんは正面を向かれ、気合いを入れて弾くのですよ。さぁ参りますわよ〜〜……のはず。
んが、あらっ、塩入さんの方を(つまりは後ろを)見ていて、一息ついての、なんとここの出だしは超スローリー。
「へっ (゜゜)」。肩透かしを食らった私のぽかんとした顔なぞお構いなしに、一気にスピードをぐんぐん上げていつものチャルダッシュで潔く締め括りました。手ごたえ十分。あっけにとられているうちに終わってしまった(+o+)
いやん もう 反則!! 感服でした(^^ゞ

久郷ボンナレット親子初披露の古典舞踊
なんとなく耳にしたことはあるけれどちゃんと聴いたことがない東南アジア系な曲(カンボジアの舞曲)を初めて聴きました。しかも舞踊で。全体の動きと手足の指先一本一本までもの総て柔和な動きのなかにどれほどの強い力が込められているのかがわかる。力を込めて柔らかさを表現するのだと。
リズムがつかみ所がない繰り返しているかの曲なのに踊るお二人は乱れなく。ラストもぴったり。とっても不思議でした。民族衣装の綺麗なこと。私たち、来賓な気分です。

そして川井さん塩入さん再びご登場
アメージング・グレイス
静やかに入ってくるヴァイオリがなんと慎ましく美しいことか。人間味ある暖かさと、崇高な讃美歌が一体となった感動的な演奏。つづく浜辺の歌
聴きながら、心に音色を留めながらの生演奏を、ヴァイオリンもピアノもを聴く(聴きあさるほど)気が充ちていたことに気が付いた。私達受け取る側の情熱がある息の高まりが客席にあったと思う。いくら演奏が素晴らしくても感じなければ何にもならない。私達がこの素晴らしい演奏に、どれぐらい真剣にセンサーを張り巡らしているかという欲を確かに感じた。
お二人のpppの音や川井さんの掠れた切ない一音をも聴き逃さないぞという気の集結。それは塩入さんがピアノのペダルを離し、ヴァイオリンの余韻の音が同時に終わる緻密なタイミングまでを聴くことができたから。
きっと演奏者は生音の極小の音をどこまで私達が付いてきて耳に届くかを知っているかのような音量のコントロールをなさっているのと。
そこに繊細な音色を集中して聴こうと構えても神経質にならない、心が研ぎ澄まされていく感覚が呼ぶ色彩豊かで温かな音の心地よい、聴きたいと欲が出る心の行き届いた演奏があることを知り得たのではと思います。
ピアノはロマンテイックな詩趣のふくらみと穏やかながら、内側に深い拡がりと思索を感じさせる、心がじわっと滲むようなとても円やかで素敵な音色でした。

傷ついてる日本。癒しも必要です。これから徐々に気持ちが弾むこと楽しいことが必要になってくる。美しいものを求めるようになると昨日の新聞で読みました。
TV映像などで見続けてきたでガレキの山、無残な建物、今回の台風でも繰り返された自然の生々しい傷跡。殺伐とした風景に、美観と美しさを求めていくようになのでしょう。また見続けてきた美しさを再確認でき、より有り難く思うのではとも思います。
私が美しい音色を聴き、舞踊を見た瞬間、私の心が洗われていく実感を得たからそう感じました。
震災、災害を、直には知らないけれど、報道でしかわからないけれど。心は沈んでいました。
日々を過ごす中で、
事実を知ることは恐ろしく、きれいごとではない。
でも見て聞いていくことだけでも、あらゆる意味での本当の美を見極める心と目が私達には培われているのだと思います。これからも。
美しい川井さんと塩入さんの演奏&クメール古典の舞踊には芸術と文化にある本物の強さを持つ「美」を見極められたコンサートであったのです。
ありがとうございました。
takako.