古川展生×塩入俊哉 SUPER DUO LIVE 「ピアソラ新基準」
3月15日thu. @JZ Brat sound of tokyo

Program
1. AUSENCIAS
2. エスクアロ
3. タンティ アンニ プリマ
4. Triunfal
5. オブリビオン
6. Fuga Misterio 
7. アディオス・ノニーノ
 
   一息休憩

8. Soleda(孤独)
9. Onda Nueve
10.ミケランジェロ70'  … again 
11.悪魔のロマンス
12.南へ行こう
13.ブエノスアイレスの夏
14.ブエノスアイレスの秋
15.ブエノスアイレスの冬
 もっちろんencore
16.リベルタンゴ
17.約束:塩入俊哉

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昨夜ライブハウスにて、BLogを通じて素敵な皆様と素敵な時間を共有できたことが嬉しく、御礼申し上げます。
演奏者&皆様、全員が想いいっぱいな同じ音楽へ向かう集中はとても純粋なエネルギーであり、温かなキモチで
繋がっていると感じられました。この感覚が心地良い。
それぞれの想いが胸に刻まれるライブに出かけられることに感謝し、謙虚な姿勢を心に留め、takapiにならず こんなBlogですがBlogの扉を、音楽感性の扉を開いていきたいと思います。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします!
takako.
♪\(*^▽^*)/\(*^▽^*)/\(*^▽^*)/\(*^▽^*)/♪

『ピアソラ新基準』の文字にこのライブはピアソラへ「挑戦状」を突き付けたと私は思った。

オープニング曲は多分初めて聴かせていただくかもの曲、AUSENCIAS
さぁいらっしゃい!な心構え(私はピアソラ?笑)に アコーディオンのバンドネオン如くな音色。渋い!Accoが旋律を弾くのはピアソラへの敬意と感じ、 息を吸い込むように近づいてきて、そーっと離れて行く。この伸びがAccoの特長。和音の層から滲み出てくる張りのある余韻の艶やかさで侘びな音がメランコリックの彼方へと遠ざける。えっ?オブリビオン♪なの?と聴き違う程近いAccoのメロディに、チェロはバッハの無伴奏が融合したの??バロックな要素を持つピアソラでしたね。
ピアソラの全編がこのように穏やかな曲には悲哀、ロマンティシズムとも違う異質な精神世界が漂っている。静けさに魂の存在だけを残して行った濃密な気。
この曲はそう、3.11への祈りでもあったとも感じていた。タイトルには不在の意味でしょうか。消えていった魂が存在していた価値の場所を、AccoとCelloだけが今の位置から指していたのです。
そして次曲のエスクアロはサメ
ワタクシこの曲を古川さんのチェロで聴きたかったのですね。ゾゾっゾゾっゾゾっと迫るチェロの旋律。ゾゾを最初はスタッカート気味に同じ繰り返しを二回目からはやや伸ばし気味に奏でるとじわじわ迫ってくる恐怖が増しリアルです。擦り上げ軋みわめくチェロという名のサメは釣られて苦しむのか、いいえ餌を食べ、かわして、あざ笑わっている。ピアノがあくまで低音でいるのが狙う人間ね。コワいけれどサメと人間の一対一での駆け引きの思惑にどきどきします。
古川さんが阿吽の呼吸を感じて欲しいので敢えて塩入さんと二人でやりたいとのお話から、タンティ アンニ プリマ
この曲がカクテルブエノスアイレスの風に似合いそう。Bowinngの優雅な調べとピアノの伴奏の徹した和音と綿密なアルペジオがとてもキレイです。サメと格闘した後、涼やかな風を感じ、火照った身体をNight Barのカクテルで体中に水分補給できた気分です。
ほっと一息から。 きました。堰を切ったいきなりの急が。勝利
お祝いですもの。空気を切り裂く沸き立つ激しいリズムが轟く。
中間チェロのつま弾きとピアノの下降する音にオリジナリティの音と安心すればそこから一気に加速。この急発進はスゴくてタンゴらしくていい。気分爽快!
熱気を帯びて来た所で。 オブリビオン
ピアノのイントロのリヴァーブが極上キレイ。そしてチェロが奏でる私の大好きなメランコリックな旋律に泣きそうになる。もっとキュンと来た箇所が。ピアノソロがくるかと思われた中間でチェロが震えて咽び泣いたのです。一見いえ一聴な方に全体が地味系な色彩に、モノトーンの翳りのままメロディの動きはひっそりと息を漏らすようにもの悲しく流れ、やがて曲は密やかに閉じ、忘却へと去ったと聴きました。
淡々と流れているようでも明らかに異なるでも違和感のない音が心を集める旋律で記憶を置いていたのです。なんと洒落た味付けでしょう!
フーガと神秘
フーガです。はい。バッハです。チェロのフーガソロから始まって縄をギシギシ編むように絡まるピアノ。そこからは互いの64分音符(じゃないかも)をそれぞれの領域を一筆書きで螺旋階段を昇る見事な演奏、しかもピアソラですから、ピアノとチェロの音域の上下を、シルクの布一枚で隔てたような音のぎりぎりな限界での激しい起伏を往復。いやん呼吸をする隙がない!
緩の部分でもラストはきっと急が待っているよの期待でぞくぞく。答えるように一筆書きから、スリリング極まりない切り込む音とその速さ。お互いの楽器を操るテクニック、精度の高さと感性の信頼の総てがかっこいい!
としか言い様がございませぬ。う〜〜〜ん濃厚!
一部ラストは、 古川さん大好きな作品。古川さんを演奏で「この曲、絶対聴いて!」みたいな、紳士じゃない、ワイルドな古川さんを思う曲、アディオス・ノニーノです。
ピアソラが亡き父に捧げた曲は哀しみいっぱいで書かれた。チェロのソロには慟哭もあり、でも目を閉じていても音のする方で目を開けたら、微笑んでいる音楽の明るさが私には残るようになりました。絶望の淵から這い上がり、一縷の希望の音へとすがり確実に突き進んでいく生命力が在ります。ラストの音を置く音色まで大事に聴きました。
このコトンの音にこそがノニーノの最期を標していたのではと。
一部で既に確かな演奏、難曲とは聴かせない自在で艶やかな表現、Duoを熱い音の波動を楽しまれている様子に大いに妬きながらも満足満足です。

さて二部は、 Soleda 孤独
孤独という不安が寄せるイントロに、深呼吸で息を整えて自然体の雰囲気に音が滑り込んでくる。重た気な空気に沈静しつつ広々とした抒情で包む感覚に、孤独というタイトルの割に悲壮感がない。ピアソラは孤独も好きだったのではないかしら。なんとなく全体像が醸し出す香りには、ピアソラという名の独特のワインが熟成されて今栓を開けて、味わっている感覚。
ですので古川さんは、僕のような孤独…と。実はご自身の醸し出される音色の香気に酔っておられるのではと思いました。
Onda Nueve
ついてこいよ!な次の展開を予想させるピアノのイントロ。熟成された孤独の香気を突き抜ける破壊的な(決して荒いのではない)音の乱舞と不穏な安らぎの交錯。圧倒的な素晴らしい音の連なりにもちろん楽譜に的確に弾きすすんでいるのですが、本能的に即興で生み出されるこれぞお二人の音楽感性の阿吽の呼吸を感じるのでした。超快速の鮮やかさに脱帽!
ミケランジェロ70'
エスクアロ♪とカップリングで聴きたい曲なのよ。両者似ている曲と感じていましたので嬉しい。もちろん同じではなく、こちらはリズム取りが難儀そう。うねうねした曲に振り回されて踊りの輪に入っていた自分がいつの間にか一番前に押し出されていた〜なんて感じに。
弾き終わったところで、塩入さんが、
「あのさ、今のも一回やらない??」の爆弾発言
この発言でハッとなさった古川さんと対照的に私達は一気にステージとの距離が近くなりました。
聴く体勢の空気が明らかに変わった。歩み寄りのチャンス到来。
今迄ピアソラの音楽につきものの緊張に支配され(ちゃんと伝わっていたのですね)とにかく濃厚ですざまじい音の波に呆気に取られて聴いていた私達に聴くポイントが定まったのです。
塩入さんが具体的にテンポが、と言ったことでテンポに注目がいきまして私達も身体にあるリズムで音楽と同調し、空気が ノリに変わっていったのです。
緊張をすっと解きほぐした塩入さんの提案に私達はほっとしました。
私的にはソーソーソーと伸ばして弾く音とシラソッて入る音の切れ味がすっぱり鮮やかになり、自発性で突き進む疾走感が1回目とまるで違う。血流が逆流しそうでした。
終わったとき歓声が発した盛り上がりと波打つ拍手。これぞライブです。
空気が熱く融け込む一体化な雰囲気に変わったことは言う迄もないですね。
悪魔のロマンス
悪魔はピアソラのバンドネオンであるとどこぞで読んだ記憶があります。ですのでピアソラのロマンス。シャイな方で直接的な表現を避けられたのかしらね。
古川さんのCDに収録されていますので、耳に全音がへばりついており、ゆえにピアノの音色の違いも瞬時で解ります。右手のちょっとした閃光の響きで華を添える一音のエッセンス。チェロがつま弾く音でのピアノソロがすこしだけ転調する小技。朗々と謳い上げるチェロの聴かせどころは、センチティブでゆったりと支える懐の深さで。愛の語らいが甘やかで気品よく優しく心に触れてきます。
不安の欠片を感じないピアソラの作品です。ショパンのよう。
初めて聴く南へ行こう
ノスタルジーを感じさせる穏やかさが、やがてドラマティックに盛り上がっていく曲。郷愁の念を抹殺するかの如く明確なタンゴで身を翻す。舞台は賑わうカジノ。手に取ったコインに刻まれた年号。同時にフラッシュバックした故郷の情景が走馬灯のように脳裏を巡るピアソラを描いていました。あたかもコインを裏表と指先でひっくり返す仕草と一緒に。ひまわりという映画曲をも感じ、塩入さんの追憶のオペラを聴きたいとも思う連鎖反応も起きました。

いよいよラスト三曲は待っておりましたブエノスアイレスの四季から夏の三曲。
ヴィヴァルディの四季を意識して書かれたのでしたよね。でもあまりにも対極でそこが面白くヴィヴァルディはカミナリが鳴っても美しい風景と調和していますが、ピアソラは不調和と混沌が土着な風土を聴きます。 まさにブエノスアイレスという風土を立体的彫像として浮かび上がらせる演奏。がDuoです。 ピアソラがまず最初に書いた夏から。書かれた順番通りです。
イントロ無しにいきなりサビから突っ込む熱さ。安易な感傷など入り込む余地がない大嵐な夏。が、重いのに軽い。夏が好きなんですね。これは常に安定したリズムの由縁でしょうか。
ここまで堂々と弾き切られますと、踊れないタンゴと評されたピアソラのRevueを思います。当時の人がポカーンと驚いた表情が目に浮かぶよう。激しくて身体の内かた突き動かされるような何かに支配される。うひっ(^ー^* )
なんてね、秋もすごいのよ。
あと打ちの打音と親密に絡むピアノの音が浮かび出る調和に、やがて嘆きのチェロが。植物が枯れて落ちて行くさま。下降を辿るチェロのぞくっと来る奈落の音色。 畳み掛けるリズムのおいかけ回しと連打、両者の音のバトル。収拾がつかなくなるんじゃなぁいとハラハラドキドキものもそっちのけ、なぜかばっちり合う呼吸。
もうここまでくれば冬は絶対に聴かなくちゃの冬
私は冬が好き。えへへ(^ー^* )ピアノが前面に出る箇所が多いとも思うので。 秋で落葉をチェロが奏でれば雪はピアノが描いているように聴く。チェロの深い響きには大陸の強さを象徴している。
ピアノが右手オクターブで上に上がっていくスゴ技の打音は鍵盤を叩くのではなく全身全霊で奏でている音なのだと確信できるピアニストです。
厳しさを極限まで轟かすメロディにふんわり春の温かな陽射しが差し込むエンディングになんとも言えない温かさと生命力を貰い活力が沸きます。

ブエノスアイレスの四季、演奏家も私達も我をも忘れてのめり込んでいる曲と思える一体感が堪らない。

最高潮で迎えるもちろんアンコールはこの曲。リベルタンゴ
激しいパッセージに最強のテンポで駆け抜けるタンゴ。全力疾走で幾重にも織り込まれるメロディの咀嚼がピアノからチェロへそしてピアノへと滑らかに手渡され、助走な間奏のチェロのソロの掠れ具合と音程が良かったです。
そして楽器間のバトンが音楽をゴールに向かって昂揚させ、鮮やかにテープを切った!ライブハウス全体、瞬間大沸騰!
お二人の余裕綽々の表情に、こちらは気が急いても確実な急テンポを保持しつつな演奏が憎いな。
拍手と共にざわざわとコーフンの気が収まらない空間を、鎮めるようなロマンティックバラード
絆という 約束
コンサートで弾かれた唯一ピアソラではない曲が塩入さんの作品でした。古川さんに感謝申し上げます。 心に物語を描いていこう。ライブの初めで感じた3.11.への祈り。哀しみの心中の隅っこで膝を抱えてうつむいているであろう自我にゆっくりとほの明るい光が射し込んで行くメロディ。差し伸べられた手を取れば、天と地、魂と人、あらゆる生命の源に息ずく絆と知るのです。それを自分の人生という物語で繋いでいけたら。 や〜くそくぅ〜の歌詞が心でまわる。人への祈りであってもこれこそが自分だけの物語。この曲への原点回帰が私達の帰る場所なのかも知れない。
チェロの息遣いのようなニュアンスの動きが作品のファンタジックさを物語り、インフィニティな願いの余韻が流れました。

っと書いてきたところで気がつきました。
新基準は挑戦状ではなかった。

我が家のお隣さんにブラジルから来た若夫婦が住んでいた時期がありました。二人とも日本人ですが。ブラジルの海岸線は一見真っ直ぐでも、陸に一歩踏み込めば複雑に入り組んでいること。日中はその複雑な地形で熱帯の陽射しを避ける影があちこちにできる。すると涼やかな風もそよいでくる。夏も日本ほど蒸し暑くないが気温の差が数時間でかわるとも。海水が意外に冷たいので強い陽射しに火照った身体を冷やすのに最適であること。ひんやりとした海水の心地よさ。温暖でありながら四季がある国であること。を思い出したのです。
ブエノスアイレスの四季に留まらず、 ピアソラの音楽そのままと思った。
ライブ演奏を聴く事で複雑な景観、そこで育まれ、音と重ね合わせたピアソラの心象を聴いていたと。
ピアソラは現代の音楽ですが、今なお一層取り上げられているのは、喜怒哀楽の音楽は自身のアカデミックな理論と根源的な思考のブッキングであり、
その風土とありのままな人間臭い魂のあるところに音楽家達は共感し探求しているのでしょうか。聴く私達は音楽には理論より感受性が大半を占めます。感性は精神の栄養素、摂るほどに己の魂の生存を知らしめ生きている価値を見いだすのです。
新基準とはピアソラへ敬意を払っての讃辞。
ライブ録音という果敢な挑戦にも変幻自在の音楽感性の波にお互いぴたりと寄り添える至難の技を持ってその上でDuoで出来うる、Duoでしか出来ない誰でもない二人の音であること。
他者の追随を許さない圧倒的存在での音には、ピアソラの魂を世代で繋ぐ絆のDuo演奏の揺るぎない確立があったのです。これが新基準であると。私は思いました。あくまでも私基準です(笑)

ぶっちぎりで弾き切ったDuoがふっと微笑み合う。

ピアソラが立ち上がってブラボーって拍手を贈っていますもの。

…僕の、征服者がここに居たって ね。

takako.