京橋の駅で降り、階段を駆け上がるとき、仰向けに落ちてばたばたと慌てているセミがいた。ひょいとつまみ地上へ。緑の街路樹がこんなに何本も茂っていたのね。この暑さに大活躍のセミものびちゃったかな?
まだ落ちちゃだめよ。木に戻し、鳴いておいで!と願った。
暑さなんて飛んじゃう。心はうきうき。
ル テアトル銀座にて朗読劇『ミッシング・ピース』が始まる。

ー登場人物ー
ヴァイオリニスト 瀧口周子:市川春猿 宮本笑里(ヴァイオリン)
芸大客員教授 ロネン・ヴァインフェルト:市川右近
美貌の留学生 桧森龍也:市川段治郎
双子の少年天使;脇田茉奈
双子の少女天使:柿花沙羅
超心理学者 桐谷 衛:古藤芳治

夢の中のヴィエニャフスキー:市川右近
夢の中のメック夫人:市川段治郎
夢の中のジプシーの少女:市川春猿

音楽監督・指揮・ピアノ・Syn:塩入俊哉
音楽 Based on:千住 明
演奏:Missing Piece アンサンブル

天才ヴァイオリニストにして快楽と賭博に溺れ短い生涯を閉じた悲劇の“ヘンリク・ヴィエニャフスキー”。彼が作曲したのに自ら封印してしまった幻の楽曲ミッシング・ピース♪を、ヨーロッパの各地へ赴き小節の断片を捜しメロディを追っていくお話。
そこへ三人の登場人物が前世はまさに当人でしたと思う、愛と輪廻転生の物語。運命によって導かれ逃れられないミステリーロマン。
朗読を語る歌舞伎役者さん。表情には出さず声に表す感情が言葉に集中でき想いを広げる素晴らしい語り口。一切の誇張がない的確な動き。そこへ映画のように画面に映し出される映像と文字の絶妙な視覚的タイミング。スーパー歌舞伎を思う演出。
総ての言葉にいえ、空間にも繊細な音楽が絡み、心の喜怒哀楽をさらけださせる高揚感とイマジネーションをかきたてる絶妙なオーケストラの音楽。映像と朗読に添う、また先導する曲でも塩入さんの指先から導かれる音楽の動きが視覚的にメロディを動として描いてゆく情景をみていました。笑里さんの美しさが悲しい程にやるせなく音に乗って響いたり、妖艶なまでの音の表情、穏やかな感情も、早いパッセージの激情と流麗な響き、酔いました。

それらが皆一体となり息をもつかせぬ矢継ぎ早攻めの展開に見いり聴き入り想像し、心を乱され、これがリーディングスペクタクルなのねと納得するヒマは無かった。スーパーゴージャス朗読劇。
映画を観ている?違う。目じゃない。オペラを聴いてる?いえ、歌じゃない。己に還して心を覗かれている焦燥感を初めて感じた。一言では表せない壮大なミステリーロマン、リーディングスペクタクル『ミッシング・ピース』
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